2012年04月27日

靴作り〜其の三

さて前回、糸に塗り込むチャン作りでモチベーションが一気に下がったところで終了しましたが、
今回はそのチャンを糸に刷り込んでいきます。

麻糸.jpg

こちらがその麻糸で、太さは16番の5本よりと9本よりの2種類・・・。

まあ人によるんでしょうけれど、掬い縫いでは9本より、出し縫いでは5本より、と使い分けております。

チャンを刷り込むところもお見せしたいのですが、生憎一人なので写真は撮れませんでした・・。

靴作り・掬い針作り.jpg

こちらは針です。

布団針をバーナーで熱し、掬い針と同じカーブに調整します。

また布団針は先が尖っていますが、掬い縫いでは針先が中底の中で引っかかってしまうので、先をヤスリで丸く削ります。


色々準備が大変です・・。


そしていよいよ、掬い縫いへ・・・。

靴作り・掬い縫い@.jpg

まずは、石鹸くずの中に掬い針をいれて、針や糸がスムーズに通るようにして・・・、

靴作り・掬い縫いA.jpg


予め空けておいた掬い縫い用の針穴に差し込みます。

靴作り・掬い縫いB.jpg

で、反対側から布団針を入れて・・・、

靴作り・掬い縫いC.jpg

掬い針を抜いた方から、もう一本の布団針を差込み・・・、

靴作り・掬い縫いD.jpg

で、奥の糸を手前に“くるっ”と引っ掛けます。

“縒りをかける”とよく言いますが、糸が解けないよう結わえる感じですね。


靴作り・掬い縫いE.jpg

そんでもって、左右に思いっきり糸を引っ張ります。

これが結構力が要りまして、全体重をかけて引っ張りますので、もう手や指が持ちません・・。

なので、革で作った指サックや簡易手袋のようなものが必要になってきます。

結構体力を使うところですが、ここが一番

“手縫い靴”を作ってるな〜

と感じるところでしょう。

靴作り・掬い縫いF.jpg

で、最初に溝堀した中底の革を元に戻して完成です。

因みに、いつの間にか靴にカバーが付いてますが、様々な工程中、アッパーに傷が付かないよう“さらし”で吊り込んでます。

今日はここまで・・。

2012年04月14日

靴作り〜其の二

昨日はあんなに暖かかったのに、今日は冷たい雨がしとしとしと・・。
三寒四温の今日このごろです。

さて、靴作りレポート其の二です。


完成したアッパーを、木型に釣り込んでいきます。

殆どの靴には前と後ろに芯が入っています。(モカシンなど入ってないものもありますが・・。)

満員電車でピンヒールなどで踏まれたりした時に、足を傷めない様に、

また歩行の時、靴の踵部がしっかり足についてくるようにする為のものです。


踵部のアッパーとライナーの間に・・
靴作り・踵吊り込み@.jpg

ホワイトペースト(アクアセメントともいいます)をしっかり塗り込みます。

靴作り・踵吊り込みA.jpg

また、かっちりとした靴にしたい場合は、サイド芯を入れたりすることもあります。

基本、アッパーと同じ革を入れますが、今回アッパーはやや薄めの革なのでアッパーよりも厚めの革を入れてます。

靴作り・踵吊り込みB.jpg

で、木型の踵、底部分には鉄板が付いてますのでタックスと呼ばれる釘を使ってアッパーを留めていきます。

靴作り・踵吊り込みC.jpg

このとき、トップライン(履き口まわり)に隙間が出来ないよう注意が必要です。

また、吊り込み時革を強く引っ張りすぎると履き口が下がってしまうので、タックスで留めておくと便利でしょう。

靴作り・踵吊り込みD.jpg

柔らかい革の場合は一度に吊り込みできますが、厚手の革や堅い革の場合は、まずエッジの内側10mm位のところに仮止めをし・・・、

その後エッジ周りをポンポンでしっかり叩き、中底のエッジのラインをしっかり出して内側5mm位の所にタックスを本打ちしていくとキレイに皺が伸びます。

靴作り・踵吊り込みE.jpg

キレイにエッジがでました。


次は先芯です。

先芯(トウパフ)も踵同様、床革を使っていきますが、教室では手間を省く為シンナーで固まる簡単なものを使っています。
今回も時間短縮の為、そちらを使用・・。もちろん強度も問題ありません。

靴作り・先芯吊り込み@.jpg

まずライナーを吊り込み、糊もしくは釘で固定し、シンナーに浸した先芯をライナーの上に貼り付けます。

このとき、腰部から伸びているサイド芯の跡が浮き出ないよう、サイド芯の長さを調整し先を薄く漉いておきます。


靴作り・先芯吊り込みA.jpg


でアッパーを被せて吊り込んでいきます。

この辺りからが、靴作りの醍醐味でしょう。

平面状だった革を、立体的な木型にピッタリと吸い付かせるようにしなければなりません。

革には伸びやすい方向と、そうでない方向があります。

ワニと呼ばれる道具で、どの方向にどれくらいの力で、というのを革と相談しながら吊り込んでいきましょう。



靴作り・先芯吊り込みB.jpg

ただ力任せに引っ張っても、このように甲部に変な皺が残ってしまったりします。

革を引くときに、その部分の革がどっちに逃げたがっているのかを見極める必要があります。

このときワニを使う右手(右利きの人の場合ですが・・)だけに気を取られないように・・。

意外と反対側の手の方に意識を集中させるといいでしょう。


靴作り・先芯吊り込みC.jpg

よしっ、ここだ!と思ったら釘で革を留めていきます。

靴作り・先芯吊り込みD.jpg

キレイに皺が消えました。


靴作り・先芯吊り込みE.jpg

トウも踵同様、しっかりとエッジが出るようにポンポンで叩いて形を整えていきましょう。


教室で殆どの生徒さんが行っているセメント(圧着)式製法ですと、もうこの後は詰め物(コルク等)をして底材(ソール・ヒール)を圧着機で付けて完成なので、全体の8割が終了となります。


しかし、ハンドソウウエルトの場合はここからが本番といった感じでしょうか・・。

いよいよ底材の手縫いへと入っていきます。



その準備として行うのが、糸と針作り。

靴底を留める糸には、当然強度が必要となります。但し太すぎては縫いにくいので適度な太さ・・。
また、いくら強度があっても堅い素材は逆に切れやすいので柔軟性も必要でしょう。

更には水に強いということも必須条件です。

そういったことを考えると、もっとも適しているのが麻糸です。(麻糸は水気を含むとより強くなる性質があります。)

ただ、単に麻糸だけだと簡単に切れてしまうので、強度と柔軟性を持たせる為にチャンと呼ばれるマツヤニを塗り込んでいきます。


靴作り・チャン@.jpg

これがとっても面倒・・・。
自分、靴作りの作業の中で、これが一番嫌いかも・・。

しっかり計量して・・、

靴作り・チャンA.jpg

コンロで熱して溶かします。

このまま冷やすとまたもとに戻るだけですので、この溶けた状態のマツヤニに食用油を加えます。

この量がとっても微妙・・・。

その時の気温や湿度で堅さが変わってきますので、毎回作るときにはマツヤニと油の量、そして日付を記録しておきます。

以前の記録を見ながら1g単位で油の量を微調整・・・。

靴作り・チャンB.jpg

で、水に流し込み固めていきます。

耳たぶよりもチョット硬めに・・・・。


これを麻糸に刷り込んでいくのですが・・・、

もう既に手がネバネバ、ねば〜。   これが嫌なんですっ!

一気にモチベーションが落ちたので、今日はここまで。

2012年04月13日

春靴完成〜!

ここ数日でようやく春めいてまいりましたが、今週もお2方の靴が完成〜!

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2足目のTさんは、黒のパンプス。ライナーの芥子色が渋いっ!

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パンプスは普通、コバはせり出さないものが多いのですが、ご本人のたっての希望で押し縁を敢えて付けてみました。

底材も、

“どうしても革にしたいっ!!”

とのことなので、Tさん得意の簡易マッケイにして底材の剥離を抑えるようにしました。

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ヒールの積み上げやペーパーでの磨きに大分時間がかかりましたが、ご本人も納得の一足になりました。


踵もしっかりと付いてきているようなので、よかったよかった〜。


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続いては、4足目のNさん。

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当初はトリッ〇ン風の靴ということで、踵・先芯いづれもいれない予定でしたが、やはり履き心地を考慮し、きっちり入れることに・・。

今回はMボックスのアンティコを私用。

油断すると手垢や糊の跡がついてしまうデリケートな革ですが、コーティングを施し、且つ婦人用手袋をしながら、丁寧に作業を進めてきたので、殆どオリジナルの色のまま完成させることが出来ました。


また、かなり外反足気味(過回外)なので通常の靴だと踝が当たりやすい為、一足目の靴は中敷で外反を抑えるような処置をしましたが、今回はその辺りも問題なさそうです。

97_4.jpg

ポップな靴下とよく似合ってます。

お二人ともガシガシ履いてあげてくだ〜い。

2012年04月10日

持参革

昨年から一足目の靴を作成中の土曜クラスのTさん。

95_thumb.jpg

ついにパンプスが完成しました。

Tさんパンプス完成.jpg

グリーンの革を使ったパンプス。ライナーはオレンジに・・。

どうもお疲れ様でした〜!


因みにこのグリーン革、木曜クラスのNさんが以前ご自身で購入してきた革で、工房の棚に置いてあったもの。

一目見てこの色が気に入られたとのことで、私のほうからNさんに許可を頂き使わせていただきました。


工房にも革は80種位置いてはあるのですが、最近はご自身で革を購入される生徒さんが増えてきました。

浅草や秋葉原、浅草橋辺りでは、最近一見さんの方でも気楽に革が買えるようになってきたので、こちらの方でも様々なお店を紹介しています。


Eさん持参革.jpg

こちらは日曜クラスのEさん。

ボタンブーツを作成中ですが、茶系のオイルとヌバックを早速購入してきたようです。

Oさん持参革.jpg



こちらも同じく日曜クラスのOさん。一足目からご自身で購入されてきました。

やっぱり茶系・・・。


うちにも茶系は20種類以上あるのにっ!!

Oさんアッパー作成.jpg

まあ、上手く縫えてますけどね・・・。




Kさんアッパー作成2.jpg

こちらは、一足目で赤の型押革をご自身で購入してきてギリーシューズを作ったKさん。

2足目は、黒を基調にしたエラスティックスタイルのシューズを作成中。


“部分使いでゴールドが欲しいっ!!”

ということだったので、工房にあった唯一のゴールド革をお見せしたところ、

“う〜ん・・・”

ただ今回は、ご自身で買いに行く時間が無いとのこと・・。


で、買って来ました。

ゴールドレザー.jpg

3種類も・・・。


Kさんゴールド.jpg

因みに使っているのは履き口周りのクッションと、甲部のチップのみ・・。

色の好みはなかなかムヅカシイ・・。

2012年04月03日

靴作り〜其の一

13_2.jpg

と、タイトルとは裏腹にいきなり革ベルトの写真・・。

・・・・丁度このタイミングで完成したものですから・・・。



最近、革小物や鞄類のアップが多かったようで、一部の方から、

“靴づくり、ときどきブログ”なのに・・

といったご指摘もありまして・・・。

ということで今回は久しぶりに靴作りの工程をばご紹介したいと思います。


今回は、ロングノーズの木型を使い製法はハンドソウのパターンです。

靴作り@.jpg

まずは、足のサイズに合わせた木型をチョイスし、フットプリントの数値と照らし合わせます。

BP甲部の高さ、また踵の大きさ・形状など、その人によって各部分数値が異なるわけですが、最も数値の小さい部分を基準に木型のサイズを決定します。

今回は足長が242mm、BPが250mmの為、木型は24.5cmをチョイス。

一般的に日本のJIS規格の木型だとワイズはEEEといったところでしょうか・・。

また後部足長の長さ等も測ります。

後部足長とは、BP(足の親指の付け根と小指の付け根)を結んだ線と足の進行方向に対する足長の線が交差する点から踵最後部の長さですが、ここの長さが重要です。

まあ、簡単に説明すると、例えば足長が同じ242mmの人でも足指が長い人もいれば、短い人もいるわけで、そうすると歩行の時に地面を蹴り上げる位置が微妙に違ってくるわけです。

この位置が正確につかめていないと、いくら足長が合った木型でもフィット感は得られません。


なので、その方に合わせた後部足長を木型に反映させる為、木型底部にもロウで微調整を行います。


靴作りA.jpg

で木型補正が完成したら、今度は中底作りに入ります。

5mm厚のベンズと呼ばれる堅い牛革を木型に合わせて切り出し、水に浸します。

表面の銀をガラスで削り、また床面も毛羽立ちをこそげ落とした後、木型に釘で打ちつけます。

靴作りB.jpg


このとき、きっちりと木型底面のエッジが出るようにしっかり叩いていきます。

靴作りH.jpg

この状態で一晩置き、乾燥したら包丁で丁寧に切り出していきます。

靴作りC.jpg

今回はハンドソウウエルト製法の為、掬い縫い用の溝ほりをしていき、掬い針にて約8mm間隔で針穴をあけていきます。



ここまできたら中底作りを一旦離れ、今度はアッパー作りです。

補正した木型から型紙を作り、それに合わせて好みのアッパーを作っていきます。

今回はシンプルな外羽根タイプ。羽根は小さめ(2つ穴)でチョット、ヨーロピアン風に・・・。

靴作りD.jpg

革はパープルのナッパを使用。


靴作りE.jpg


履き口をしっかりさせる為、今回は黒のパイピング(玉縁ち)を施します。

靴作りF.jpg

単に織り込みだけにするよりも、多少締まった印象になります。

靴作りG.jpg

甲部は、腰部とは対照的に明るめの革ということで、今回はサビアのナッパBを組み合わせてみました。


とまあ、今日はここまで・・。また機会を見て“其の2”をアップしたいと思います。


それにしても、外が凄いことになってます。


八王子で風速40m/s ,横浜あたりでは停電が相次いでるとのこと・・。

都内で“竜巻警報”なんて初めて聞いたかも・・・。

早く帰ろう・・。